マーケティング

差別化とポジショニング|何を訴求すればいいの?

前回、購買行動モデルの例を出し、購入のステップごとに応じたプロモーションを。というハナシを書きました。では、実際の訴求内容は、どのように考え・組み立てればいいのでしょうか?もう少し具体的な内容を書きたいと思います。

 

何を訴求するか?:消費者が『選ぶポイント』で『自社の強み』のもの

最初に考えるべきは、何を訴求するか?です。
もちろん自社の商品のいくつかある良い部分・特徴のうちのいずれか(もしくはいくつか)を訴求するのですが、ここでは『自社が訴求したいもの』はひとまず後回しにして、まず、自社(≒これから訴求する商品)が、市場の中でどのようなポジションか?を考えましょう。消費者がその商品カテゴリーの商品を選ぶとき、何を基準に選ぶか?購入判断の基準になるものをピックアップし、競合となる他社商品を3段階程度でザックリとランク付けしてください。

 

『スティック型掃除機』を例に以下のようなものを考えてみました。『選ぶポイント』を、消費者目線にして考えましょう。自社(作り手・売り手)の主観ではなく、利用者・購入者がその商品を選ぶ時、何に着目しているか?をピックアップすることが肝心です。

『選ぶポイント』の抽出が済んだら、自社が他社より優位なモノを中心に『自社の特徴(強み・弱み)』をまとめます。今回のA社の商品では以下のようになります。A社の商品の特徴は、『吸引力が強く長時間使用できる』という強みをもち、反面『使用時の音が大きく価格が高い』という弱みを持っている。ということになります。

ピックアップした『強み』をふたつ軸にとり、ポジショニングマップに各社の商品をプロットします。(今回は『強み』がふたつですが、もちろんもっと多い場合もあります。その場合は任意のものをふたつ選んでください。詳細は後述)

ポジショニングマップから、A社の商品の訴求内容として以下が導かれます。

A社のスティック型掃除機は、(他社に比べ) 吸引力が強くて長時間使用できる

A社は、吸引力だけを訴求すると、B社との差別化ができなくなり、同様に充電持続時間の長さだけを訴求するとD社との差別化ができません。吸引力と充電時間の長さ という二つの特徴『両方を持っていること』を訴求することで、B社ともD社とも差別化を行うことができます。

ピックアップした『強み』がふたつより多い場合は、任意のものをふたつ選んでこのプロット作業を繰り返します。いろいろな組み合わせがある中で、今回のように『他社と明確な違いを出すことができる組合せ』が『訴求ポイントとして消費者に伝わりやすい組合せ』であると言えます。

 

今回は『吸引力』と『充電持続時間』でポジショニングマップを作りましたが、もちろん軸の選び方で、評価・プロット位置は変わります。先ほどの例に倣って考えるなら、B社は『吸引力が強く・価格が安い』という訴求をするのが、とるべき戦略といえるでしょう。

このように、『自社の強み』を訴求するには、市場での評価ポイントと合わせて考えることが必要です。上記スティック型掃除機でのA社の例のように、複数の強みを『併せ持っていること』やB社のように複数の強みの『バランスが取れている(吸引力が強いのに価格が安い)こと』も、もちろん強みとして訴求することできますし、実際の訴求では、このように単独の訴求ポイントではないパターンの方が多いのではないでしょうか。

 

『差別化』の3つの軸:手軽軸・商品軸・密着軸

『差別化』というコトバは、大きく以下の3つに分類されます。消費者が特定の商品を選ぶとき、商品そのものだけではなく、商品を提供する『場(面)』『環境』も大切なポイントとなります。

① 手軽軸(他社よりも早い、安い、便利 などで差別化)
② 商品軸(他社よりも高品質、最新技術 などで差別化)
③ 密着軸(他社よりも個別のニーズに対応することで差別化)

スティック型掃除機の例で言えば、

① 手軽軸:他社よりも価格が安い(前述 B社、C社) など
② 商品軸:他社よりも吸引力が強い(前述 A社、B社) など
③ 密着軸:階段用、スキマ用など必要なパーツを組み合わせられる など

といった内容を訴求することで、他社との差別化を行うことができます。

スティック掃除機以外でも、例えば魚屋さんを選ぶ(買い物に行く)場合も同様に

① 手軽軸:他店より価格が安い・自宅から近い
② 商品軸:他店よりも鮮度が良い・取り扱っている魚の種類が豊富
③ 密着軸:こちらのリクエスト通りにその場ですぐ魚をさばいてくれる・料理法などを教えてくれる

というように、3つの軸で考えることで、『差別化のポイント(独自性)』を見つけ出すことができます。より強力な差別化を行うには、前述のように『手軽軸+商品軸』『商品軸+密着軸』や『商品軸のなかの複数項目』といった組み合わせも有効です。

魚屋さんの例では、『他店より価格が安くて鮮度も良い』店や『取り扱っている魚の種類が豊富で、その場ですぐにさばいてくれる』店は、人気店になる可能性が高いと言えます。

 

明確な『違い』が見つからない場合は?:『感覚的要素』での差別化と『対象者の絞り込み』

さて、このように、いずれかの『軸』をベースに戦略を決め、何を訴求するか(差別化しているポイントとして消費者に伝えるか)?を考えるわけですが、他社との明確な違いを見つけられない場合はどうすれば良いのでしょうか?近年ではラベルを外してしまえばどこの商品かわからないような、明確な特徴のない商品も増えています。このような商品を訴求する場合はどうすれば良いのでしょうか?

 

方法はいくつか考えられます。

 

これまで述べてきた『差別化(特にスティック型掃除機の例)』は、吸引力や充電持続時間など、その商品の『機能(≒数値・データで表すことが可能なモノ)』に着目したものが大半です。しかし、実際に消費者が商品を選ぶ時に着目しているのは、数値・データで表せない抽象的・感覚的なモノ(魚屋さんの例)が多いでしょうし、さらに言えば消費者自身も自分の判断基準のポイントをハッキリと認識しておらず『なんとなく選んでいる』場合も多くなっています

 

もちろんこのような『感覚的な』部分での差別化は、簡単に達成できるものではありませんが、それだけに達成できた場合強い差別化につながります。機能面での差別化が難しくなっている今後、この感覚的な部分での差別化は、ますます重要になってくるでしょうし、大規模なキャンペーンや広告費を投入することが難しい中小企業こそ、この部分での差別化に注力すべきだと思います。中小企業や個人事業主では、大企業に比べ、社長や生産者の『想い』『こだわり』を商品に反映させやすい環境にあります。商品づくりやパッケージのデザイン・ネーミングなど、込められた想いを書き出してみるのも良いでしょう。そして、他社との比較をする・・・こだわり(≒良い特徴)を組み合わせてみる・・・

 

いずれもポイントとなるのは、『誰にとって』有益なのか?を考えることです。『対象者』は、絞ることでメリットと感じる内容(=効果的な訴求内容)も明確になり、見つけやすくなります。『誰でも全員』に受け入れられる商品は『ポイントの絞れていない どこが良いのかよくわからない商品』になってしまいがちです。

 

一般的には性別や年齢、居住地といった分類で対象者を絞り込むことが多いと思いますが、それだけではなく『興味』や『考え方・行動のパターン』なども合わせて狭く・具体的に絞り込み・グルーピングした方が良いでしょう。『20代の女性』『30代女性』『20代男性』…ではなく『20代のファッションに興味があって○○という雑誌を読んでいる休日はショッピングセンターで買い物に出かけることが多い女性』『30代 営業職の男性、趣味は映画鑑賞 普段は温厚な性格で意見を言うときは論理的に組み立ててしゃべることに注意している』といった形です。

 

対象者ごとに評価のポイントとなる項目は違いますし、優先順位も違います。住んでいる間取りや家族構成、収入などで掃除機を選ぶポイントは違いますし、魚屋さんを選ぶポイントが違うものになるのは、ご理解いただけると思います。

 

さらに『感覚的な』部分での差別化をするためのマーケティング施策としては、例えばSNSやBLOGなどで顧客(および将来顧客になるであろう消費者)とのコミュニケーション・関係性の構築や、購入者へのサンキューレター送付、ポイントカードなどの継続利用を促す仕組み、利用ユーザーだけが参加できる『オーナー会』や『お得意様限定キャンペーン』 などがあげられます。このような施策においても、中小企業・個人事業主が訴求すべき内容は、『絞った対象者が商品を選ぶ時のポイント』かつ『商品に込めた想い』が基本になります。

 

弊社では、このような自社・自商品や競合他社商品も含めたポジショニング確認や『強み』のピックアップ、マーケティング施策への落し込みといった戦略立案、SNS等の情報発信のお手伝いまで行っております。是非お気軽にご相談ください