イノベーション・共創

中小企業でイノベーションを進める方法

今回は、中小企業でイノベーションを推進するちょっとしたノウハウについて書いてみたいと思います。

これまで私たちは、『イノベーションは身近なもの』ということをお伝えしてきましたが、今回は、一般的な「イノベーション」のイメージである『新事業の創造』や『新サービス開発』などを想定した内容で進めたいと思います。

中小企業がイノベーション(新事業の創造・新サービス開発)を推進する過程で、担当者・推進者は、たくさんの壁に出会い、それと同時にやるべきことも増えていきます。まずは最低限のポイントを。中小企業が、自社でイノベーションを推進する基礎について、シンプルにお伝えします。

 

ポイントは3つ

  1. 「明日のご飯代」という考え方
  2. サブプロジェクトという位置づけ
  3. ゴールを共有する

 

順に説明します。

 

1.「明日のご飯代」という考え方

これは、関係者のマインドセットの話です。

 

社内でイノベーションを推進しようとする時の最初の壁は、当事者ではないメンバーから、予算や収支に対する言及や責任について問われること。もしくは、直接反対はしないまでも、イノベーション推進に疑問を抱くメンバーが現れることです。

イノベーション推進者の立場によって問題のハードさに多少の違いはあるでしょうが、仮に推進者が社長であっても、レベルの違いこそあれ同じ問題は存在し、まったくなくなる ということは、ないと思われます。

 

イノベーションを推進する上で大切なのは、『イノベーションを既存のビジネスと同じ土俵で語らない』ということです。イノベーション推進者は、これを徹底することがポイントです。

例えば、イノベーションに取り組もうとする最初のステップでは特に、推進者は、社内の経営会議や営業会議、その他何かしらの決裁者が集う会議の場で、イノベーションの内容などについて話す機会があると思いますが、こういった会議の参加者のマインドセットは、当然「業績や収支」、「堅実で効果的な経営」をベースにしたものになっています。経営会議や営業会議はこのようなテーマで進むことが基本ですから、人それぞれ・会社それぞれ、多少ニュアンスの違いはあるかも知れませんが、会議参加者のマインドセットは、大筋このような状態でしょう。

 

当然のことですが、イノベーションは、すぐに業績や収支に貢献できませんし、堅実でも効率的でもありません。それどころか、自社の業績に悪影響を及ぼす可能性があったり、とてつもなく非効率だったりします。

 

「業績や収支」、「堅実で効率的な経営」をベースにしたマインドセットの経営層・管理者層などといった経営会議・営業会議の参加者の中で、このような文脈の中で突然イノベーションの話をしても、こちら(推進者)の意図するところが伝わらないどころか、かえってマイナスになってしまうことがほとんどです。

これは、誰も悪気があってそうしているのではなく、参加者のマインドセットが「業績や収支」、「堅実で効率的な経営」をベースにしているから。に他なりません。優れた経営者・管理者なら、なおさらそうです。

普段から「業績や収支」、「堅実で効率的な経営」といった思考が身についているため、マインドセットの影響により、イノベーションの魅力や必要性が、ますます伝わりにくくなってしまうのです。

 

このようなマインドセットの影響を受けないためには、少し工夫が必要になります。すごく簡単なことです。

 

『「明日のご飯代」の話をしましょう!』

 

これを、イノベーションの話題を切り出す時に、枕詞のように・徹底して使うのです。

 

さらに、必要に応じて、『今の事業のおかげで「今日のご飯代」を稼げています。その間に「明日のご飯代」のことも考えましょう』と説明をプラスすることで、

  • 違う領域の話であると認識されることで、既存のマインドセットがリセットされる
  • それぞれが担当する既存のビジネスが肯定されることで、敵対関係になりにくい

という2つの効果を得ることができます。

 

狙いは「皆さんが得意なハナシとは少し違うんですよ」と認識してもらうことです。

簡単なことですが、意外と大きな効果が得られますので、イノベーションについて語る冒頭や、関係者のマインドセットが「業績や収支」、「堅実で効果的な経営」に戻って、したり顔で語りそうになった時に使い続けてください。

 

「明日のご飯代の話をしましょう。」

 

ぜひお試しください。

 

2.サブプロジェクトという位置づけ

多くの中小企業に共通していることは「ヒト・モノ・カネ」のすべてが潤沢ではないということです。

当然本業ではないイノベーションにヒト・モノ・カネを割くことは難しいですし、割くことが必要だとしても、承認が下りることは難しいといわざるを得ません。

 

ではどうするか?

 

まずは、イノベーション推進への想いを共有できる有志を集め、通常行っている本業のビジネスのサブプロジェクトとしてスタートしましょう。

 

当然、本業の合間や休日を活用しての展開になりますので、その間の参加メンバーの労働に対する報酬をどうするのか?といった問題も出てきます。理想的には、イノベーション推進の有志を募り、活動した分の報酬を受けつつ活動する。というのが良いのでしょうが、実際には、当面報酬ゼロでの活動になるというのが多いかも知れません。状況にもよるでしょうが、イノベーション推進のキーマンが「こいつは」と思う人材に、地道にひとりずつ声をかけていくことになるかも知れません。

 

「ヒト・モノ・カネ」といったリソースが限られている中小企業で、イノベーションを推進する部署を垂直に立ち上げるのは、非常に困難なことです。「1.「明日のご飯代」という考え方」で触れた通り、すぐに業績にプラスにならないチームを大々的に立ち上げ、社内で目立つことは、マインドセットの違うメンバーからの『横やり』を受ける可能性を大きくすることにつながってしまいます。

 

最初はアンダーグラウンドで良いのです。
以下のタイミングが来た時に、正式に組織化できるよう、準備を進めましょう。

  • 推進者以外の経営者や管理者のマインドセットが変わってきた時(正確には、イノベーションについての理解が進んできた時)
  • サブプロジェクトとして推進してきたイノベーション活動に、経営者や管理者の賛同が得られた時(具体的には、新しいビジネスモデルへのチャレンジなどのイノベーションに、会社がGOを出した時)

 

会社としては、サブプロジェクトとしての推進であったとしても、「ヒト・モノ・カネ」といった社内のリソースを使うことになりますので、経営者・管理者から、『志の高い社員が、会社の命令ではなく・自発的に自分の時間を削って、会社の明日のご飯代について 考えてくれている』と見えるようになれば、成功です。

 

「◯◯君、いつも大変やね。ご苦労さん」

 

イノベーション推進のメンバーが、時には経営者・管理者から、感謝すらされるようになるかも知れません。

 

3.ゴールを共有する

サブプロジェクトであれ、オフィシャルな組織であれ、イノベーションを推進していると必ずぶつかる壁があります。

 

それは、イノベーションをどうやって管理するかということです。
推進者の立場からすると、どのような指標を管理し、何を会社へ報告するか、ということになります。

 

これもマインドセットに近い話ですが、どこの会社もイノベーションを、というか新事業や新サービスを創造するプロセスの管理手法を持ち合わせていません。

なので、多くの時間を待たずして弊害が生じます。

今、どうなっているのか?いつまでに儲かるのか?どれくらい儲かるのか?管理手法は持ち合わせていませんが、何も分からないのは不安です。

遅からずこんな問いが投げかけられることになります。ひどいパターンだと2年間の収支計画を立てるように言われたりします。

ですが、答える方も答えを持ち合わせていません。
イノベーションは不確実性の高い未来と向き合い、「明日の飯の話」をしているのです。

その過程の今がどういう状態であるかは定性的な答えしかありませんし、いつ儲かるか、どれくらい儲かるかは分かりかねます。

当然、ターゲットとしている市場はありますから、そこから推定することや夢や可能性を語ることは可能ですが、新事業が収益を上げるまでは詳細な計画を立てることはおススメしません。

時間と労力の無駄ですし、その時間は他のことに使うべきです。

 

なので、お勧めしているのはその時々のイノベーションのフェーズに見合った目標・ゴールを設定し、それに対する進捗を図る方法として何かしらの指標を儲ける手法です。

 

そのためにおススメしているのはイノベーション・アジェンダを作成する方法です。

  • なぜ今イノベーションに取り組むのか?
  • どういった目的があるのか?
  • そして何に取り組んでいるのか?

といったようなことを纏める資料です。
これも「明日のご飯代の話」と同じ効果があり、明示的にイノベーションが存在する意義や目的を資料化することで、その効果をさらに高めることができます。

 

これに取り組んで社内に展開できれば、収支計画を求められたり、過度なプレッシャーからは解放されるはずです。

 

このイノベーションのマネジメントとイノベーションアジェンダについては、別途詳しく書いてみたいと思いますので、今回は簡単ですがここまでにしようと思います。

 

中小企業でイノベーションを推進する上で大事な3つのこと。

  1. 「明日のご飯代」という考え方
  2. サブプロジェクトとして推進する
  3. ゴールを共有する

 

ぜひ試してみて下さい。

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